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パッシブデザインー太陽の恵みを活用する2~床の断熱~
前回は太陽の恵み=熱を使う方法を紹介しました。
続いて今回は、その恵みを使うにあたってより上手に使いこなす工夫をお話ししましょう。
基本的には、取り入れた熱を無駄にせず使い切る事、それだけなんです。
「無駄にせず」ということは、使いたくないところに熱を流すつまり外へ逃がさない事をさします。
「熱を逃がさないようにする」ことを考えれば断熱のことが思い浮かびます。その通り、熱をためた部位からもまたその恩恵を受ける暮らしの空間からも熱が逃げて行きにくい工夫をします。
端的に言えば家は箱ですから普通は少なくとも6面が外部に接しています。接しているその面積に比例して逃げていく熱の量は増えます。床面積が同じでもプランによって外部に接する表面積は大きく違ってきます。このことをプランニングの一番の条件にする必要はありませんが、使い勝手やデザインを検討するのと同じくらい気にしてプラニングする事が大切だと思っています。
こうやってその表面積を抑えたとして、次はその単位面積あたりの熱損失をいかに小さくするかにかかってきます。
床・壁と窓・屋根の順にお話しして参りましょう。
床の断熱・基礎の断熱
床への蓄熱を考えるとその断熱はおろそかにできません。一口に床の断熱と言っても床下空間がある場合とない場合があります。
床下空間がある場合
普通その床面・床下での断熱を思い浮かべる方が多いとおもいます。温熱環境的にいうと断熱材が廻っている場所(断熱層)を境に外部と内部に分けられます。床面で断熱するのは床下空間を外部と見なす事になりますから蓄熱する場所は床の上にしか考えられません。しかし硬くて重たい方が効果のある蓄熱体を床上に配置するのは難しそうです。
ではどうしたらいいでしょう?そう、基礎で断熱をしてしまいます。そうすると床下空間は内部と見なされ、温熱環境的に室内として考えていいわけです。自然対流もしくはファンで強制対流により床下の土や土間コンクリートそして基礎への蓄熱・放熱が可能となります。
ちょっと横道に入りますが、この場合ファンの力などで床下空気を居室に吹き出すのは良くないのではないかと私は思います。換気の原則は人のいるところへ新鮮空気を取り入れ臭気や湿気のある場所へ流してそこから排気することなのですから。あまり扱うこと(手入れすること)ができない空間を通ってきた空気は吸いたくありません。これはダクティングされたシステムを通しての換気も同様です。ダクトを使わなくても換気のできる住宅にわざわざ危険を伴うダクトを通しての給気は必要ないのです。
ルートとしては居室の空気を床下にまわしてそそこから排気してやるのがいいように思います。または壁体内へのルートを作ってまわす方法もあります。いずれにしても温熱環境的には同じと考えても、空気質はごちゃ混ぜにしないできれいな方からそうでない方汚れた方へ動かす原則をまもりたいですね。
横道から戻ります。基礎での断熱は基礎の外側で断熱する方法と基礎の内側で断熱する方法があります。基礎のコンクリートを蓄熱体に取り込めるのはもちろん外側での断熱です。しかし実際には立地条件や使用する断熱材によって外側の断熱材がシロアリに好かれてしまうこともありますので、その危険回避のため内側で断熱する場合もあります。
基礎断熱をした場合、床下も室内とおなじ環境と考えるわけですから床下換気口は必要ありません。もちろん地盤面の防湿対策はしっかり行います。
床下空間がない場合
土間床の場合です。木造の建物でも床は必ずしも組み床で構成しなくてはならないわけではありません。地盤からの湿気の対処ができない時代に居室への使用を避けられていた土間床ですが、防湿シートの利用や配筋をした土間コンクリート打設のお陰でその心配をせずに土間床でも気持ちよく暮らせます。
この床の場合も断熱するのは基礎です。そして床の裏側は地盤面になりますが、それを外側と考え断熱層で縁を切るか、地盤より続く熱容量の大きい地球を蓄熱体と考え内側に取り入れるか、あなたならどちらを選択しますか? 私は基本的に後者です。但し外気温の影響を受けやすい建物外周については90?幅くらい断熱層で地盤との縁を切っています。これは床下空間がある場合の土間床コンクリート部分に関しても同じ事が言えます。
基礎の断熱と外周部の地盤面断熱をすれば外気温の変化に左右されることなく、温度の安定した地盤の恩恵にあずかる事ができます。
こうしてみると土間床の方がダイレクトに蓄熱や室温変動の緩和などに土間床地盤面の熱容量を積極的に利用することができて、熱環境的には有利な気もします。しかし組み床に比べ床仕上げから来る硬さの感じは否めません。いつも暮らしていくのに接触する床です、何を望むか一番大切にしたいことはなにかなどご自分の好みも含めてよく検討したうえで判断されると良いと思います。
長くなったので、壁と窓・屋根の話は次回にいたします。