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パッシブデザインについて

パッシブデザインー太陽の恵みを活用する1~太陽の暖かさを蓄熱~

お日さまの光が少し柔らかくなり、だんだんと有り難く思えるようになってきますね。
日向ぼっこをしていた時(どこに行ったんだろうそのゆったりとした時間は?)ちょと眩しいけれど、その光の中でなんともホッこりと暖かく幸せを感じたりしていませんでしたか?
空気は冷たくても身体はきもちのいい暖かさに包まれます。それは熱の伝わり方でいうところの輻射熱(**下のコラムをお読みください)のお陰なのです。 それはさておき、これから冬そして春も遅くまで有り難いお日さまの恵みを、住まいの中にも十分活用したいものです。その方法と使いこなし方を二回にわたってお話ししようと思います。

お天気のよい日には、太陽光が降り注ぎその暖かさとともに、本当に自然の恵みを感じられますね。
「光」の方は夜までどこかに貯めておいて夜間の灯りに使おうと思うと、電気に替えて蓄電しておき必要なときに電灯をともすという方法はありますが、光のままとっておくことは今のところどーしても無理な話です。
しかし、「熱」についてはそのままとっておいて夜間に使うことができるのです。蓄熱と言います。
蓄熱する場所は、建物のどの場所でも可能ですが、熱はふわふわ軽いものより硬く重たいものの方がたくさん蓄えることができます。石やコンクリートが代表的です。煉瓦やタイル、コンクリートブロックなんかも使われます。これらを熱容量が大きいと言います。
また、水も蓄熱体として優秀です。(熱容量はコンクリートの2倍、煉瓦の3倍程度)少し扱いは難しいいですが…。
これら重たいものを使おうと思えば、その場所は必然的に床が考えられます。
また、太陽高度が下がる冬場には壁面にも十分密度のある太陽光があたりますので、蓄熱体を壁に取る方法もあります。但し開口部を塞いでしまう事にもなりかねないので、内部の壁に配置するなどその場所について十分な検討が必要です。

さて、どうやって熱を集めましょうか?
様々なヴァリエーションがありますが、主に床への蓄熱について考えると次ような方法が考えられます。

A. ダイレクト〈ヒート〉ゲイン(直接蓄熱型)型

蓄熱体である床(や壁)に太陽光が長い時間よくあたるよう開口部や断面の計画をします。蓄熱体に太陽光があたればその熱でそのまま暖められます。室温が下がってきたときにその面からの放射により室温の安定を期待できます。 土間の利用がこれにあたります。一番単純でわかりやすく、つかいやすい方法です。

B. 床下蓄熱型

B-1. 温室利用型

建物の南側に付けた温室で暖められた空気を床下の蓄熱体まで循環させて蓄熱します。蓄熱体には土間コンクリート+通気層やロックベットと言う石を詰めた層の中に空気を通して熱を取り込みます。暖まった空気を床下まで運ぶためのファンが必要です。室内への熱の供給は床面からの放射によります。
ドイツへ行ったときにこの方式はよく見ました。ただ、夏には暑くて堪らないのでアイビーや葡萄やホップ(あのビールの)をはい上がらせて影を作る工夫をしていました。

B-2. 地下室利用型

小屋裏や二重になった屋根面で集熱しそこで暖められた空気を地下室へ循環させ、その床と壁へ蓄熱します。その地下室は断熱せずに大地と一体化して地球まで蓄熱体と考えます。(これは他の方法の時も使えます)室内への熱の供給は空気の自然対流によります。

A.は蓄熱放熱とも放射によります。B-1.は蓄熱が対流、放熱が放射です。そしてB-2.は蓄熱放熱とも対流を利用しています。

こうやって蓄熱体を建物の中に取り込むことによって、昼間ため込んだ熱を室温の下がってくる夜に使えるわけですから、室内の温度変化の幅を少なくすることができます。その幅は蓄熱量が少なければ大きく蓄熱量が増える程に小さくなります。そして熱容量がある値以上ではその変動幅は一定になると言われています。
しかし気を付けなければならないのは、建物自体に断熱の性能がしっかり着いていないことにはその効果が十分に発揮できないことです。つまりせっかく取っておいた熱を外部へ逃がさないよう大切に使わなければならないのです。
そして、集熱量(受け取れる太陽の熱量)と蓄熱体の熱容量のバランスが重要です。集熱量に対して熱容量が多すぎると室温は安定するものの低温での安定になってしまいます。また少なすぎれば、日中のオーバーヒート(熱がたまるところが少ないので溢れた熱で室内空気が暖まりすぎる)をおこし、夜間には放熱されるべき熱が早くなくなってしまい室温が低下してしまうことになり、室温の安定は望めません。

集熱量に対しての熱容量の大小による室内変動のちがい

このバランスについては、実験的・経験的に目安の数値がありますし、近年はシュミレーションソフトも市販されています。

**熱の伝わり方には伝導・対流・輻射と三種類あります。

1)伝導

物体の中を熱が高い方から低い方へ伝わっていく現象。
例:湯飲みが中のお茶で熱くなる。床暖房で足の裏が暖かい。カイロで暖をとる。

2)対流

流体(空気や水など)の一部分の温度が上がると膨張により密度が小さくなって上昇し、そこへ周囲の低温度の流体が流入する現象が繰り返されることによっておこる熱の伝達。
例:釜炊きのお風呂。エアコンによる冷暖房。解放式ストーブでの暖房。

3)輻射(放射)

物体が放出する波動による熱の伝達。出す方は放射、受ける方が輻射と使い分けられる。
例:炭火の遠赤外線。氷柱の脇やや水辺でひんやり感じる。太陽光。温水パネルヒーティングやデロンギ(一部対流も含まれる)フォトンなどでの暖房。暖房の方法としては理想的だと思う。

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