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パッシブデザインとは?

002:夏を過ごしやすくするための工夫

この夏の暑さ不快指数の上がる中、ただ指をくわえてがまんだけの方はそういらっしゃらないと思います。
簾(すだれ)を下げたり葦簀(よしず)をたてかけたりして、また風流にも朝顔やヘチマの蔓を這わせて窓からはいる日差しを防いだりしますよね。 風が通るように、網戸を建てて窓を開けますね。
この頃は見ることが少なくなってきましたが、夕方に打ち水をして涼しさを呼んだりします。
これらのことは、実はパッシブクーリングの基本そのものなのです。

パッシブクーリングは、まず日射を切って、次に風を通し、最後に冷熱源の利用を考える。つまり、
A:太陽熱を室内に入れない工夫
B:室内の熱を排出するとともに身体に気流を感じ体感温度が下がって涼しく感じる効果のある「風」の通り道を確保すること
C:そしてさらに積極的に自然エネルギーを使って温度を下げ涼房効果を狙う
ということなのです。

それぞれについて使うのに現実味の有るものから幾つかずつご紹介しましょう。

A:太陽熱を室内に入れない工夫

窓からの日差しを遮るのには、カーテンやブラインドなどの日除けでも効果はありますが、窓の内側では遮蔽率10~20%といわれます。どうせするなら外部で日差しを切るのが得策です。先ほど出てきた簾や葦簀は、そういう意味で優れものです。季節外や台風の時に困りますけれどね。ほかに、庇はもちろんルーバー・オーニング・ガラリ戸・袖壁なども有効です。
朝顔やヘチマでつくる影、樹木の葉でできる影も効果大です。植物には熱の再放射がないのです。(いくら日に当たってもその葉からまた熱線が出ることがないのです。)
近頃耳にされたことはありませんか「屋根緑化」、これは屋根の表面を植物で仕上げようということですが、再放射がないこととその土の断熱性、それが含む水分の蒸発冷却効果によって、日射熱は100%カットできます。
他に屋根・壁からの熱の侵入を防ぐには、十分な断熱に加えて通気層を併せ持つ二重の外皮が効果的です。通気層を通っていった空気は棟より排出されるよう換気口を忘れてはいけません。
また原理的なところで、建物の向く方向や屋根の角度についても細かな配慮をし、庇を伸ばす事や、反射率の高い仕上げ材の使用で日射熱の影響を少なくすることができます。

B:室内の熱を排出するとともに「風」の通り道を確保すること

つまり、風の通り道を設定するように平面的にも断面的にも入り口と出口をつくります。
また風を取り込み易いように、袖壁を出したり庇を出したり、建物の周りの植栽の形状の工夫もあります。
風は風まかせ。どこから吹くかわからないものだけれど、その風向きや風速の変化の特性を掴むことが実は一番の解決の糸口となるのです。
夏場・冬場その昼間・夜間について、その敷地の主風向がわかれば自然換気計画・通風計画は確実に功を奏します。しかし、局地的なそれを知る手だては確実な物がないのが現状です。
一年間かけて調査してもよいという仕事にはナカナカ出会えないだろうし、今のところ私がやっているのは、気象庁でその地方の特性を調べ、数多く敷地に出かけて風を感じ、ご近所に話をうかがう事くらいなのです。

C:そしてさらに積極的に自然エネルギーを使って温度を下げ涼房効果を狙う

一番身近なのは蒸発冷却でしょうか、打ち水もその一つです。水が蒸発する時に熱を持っていってくれる事を利用しています。屋根に散水するのはかなり効果的です。日中散水しつづけると100%の日射熱カットが可能です。
地熱の利用も魅力的です。地中の温度は5mの深さで年間平均気温と同じになります。ですから夏には少しの冷たさをもらえるわけです。土間床を取り込む(これは冬場にも太陽熱を蓄熱することに利用できます)事は単純ですが安定した効果を期待できる方法だと思います。私もよく使う手法です。また、地下室を冷却装置として利用する方法やクールチューブといって地中を通る管のなかに外気を通し冷たくして室内に入れる方法もあります。しっかり地熱を利用しますが結露の問題などが明解に解決できないのでまだ私は使ったことはありません。
もう一つ夜間冷気の利用も積極的に考えたいものです。とはいうものの通風による取り込みの他はファンで強制的に屋内に入れるくらいしか方法はないようです。しかしその吹き込んだ冷気から蓄冷して利用するという発展系も考えられます。

私たちの住むところは夏亜熱帯の気候にも近く、しかし冬になれば大陸からの寒気で零下になることは少なくても相当冷え込みます。夏の家と冬の家を持って衣替えをするように住み替えができれば簡単なのですが、そうはいきません。
そんな条件の中で一年をとおしていかに心地よく過ごせる空間を作り出せるかが、大きな課題です。冬場の熱を逃がさない工夫、熱を取り入れる工夫に対するパッシブクーリングの熱を入れない工夫、温度を下げる工夫は、両極の要求でありこれを両立させなければなりません。
閉じた空間に機械力で温湿度のコントロールをかける方が、遙かに簡単に一定の室内気候を作り出せると思います。しかし、試行錯誤さまざまな工夫を手探りしながら、感覚的にファジーな身体に心地よいファジーな環境を見つけていく方が、私には面白いことであるし、きっと身体も自然も喜んでくれると思うのです。

おまけ

「現代の夏ばては冷房病」と、言っている先生がいらっしゃる。
「暑い所から涼しい部屋へ,また暑い外へと短時間に激しい温度変化を経験することが原因です。」と。
激しい温度変化を強いられるほどの冷房温度設定はなにゆえか?
その理由のひとつに男の方のネクタイ・スーツ姿があると思います。
明治維新以来の西洋まねっこのまま、どうして風土に会わせて変化さえしないのか不思議でしょうがありません。 冬はともかく、高温多湿の夏にあの格好は見るからに暑苦しい。首元で衣服内の空気の流れを止めてしまい、汗だらけのシャツの下は想像もしたくない。それがマナーに則った礼儀正しい服装に映らないのは、私だけでしょうか?
第三の皮膚といわれる建築ですが、第二の皮膚ー衣服ーにも夏の工夫をしてほしいものです。
夏だけは、アロハやマカオシャツOK、開襟シャツにカンカン帽で扇子を粋に持っている、なんていうのもイカスと思うのですがいかがでしょう?
これで設定温度は2~3℃上がり、夏ばては激減、社内勤務の女の方の冷え性も改善され、そして使用電力もカットできて経済的、一石何鳥にもなると思うのですが…。

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